研究概要 |
本研究の目的は,経済システムの移行過程にあるアジア諸国における個人・世帯の行為様式の変容を,経済・社会変動にともなって新たに析出されつつある新しい下層・辺縁層-失業者,都市・農村の貧困層,出稼ぎ・離村農民など-に焦点を当ててオリジナルなミクロデータにもとづいて分析することにある。そこには現状分析のみならず長期的視野に立つ分析も含まれる。本研究の主たる成果は以下の通りである。 1・中国については13都市を対象とした都市世帯・出稼ぎ農民世帯調査を行い,その成果として佐藤の英文・和文単著各1冊を刊行した。また平成16年度中には,海外共同研究者である李実と佐藤の共編で,英文と中国語の論文集をそれぞれ1冊公刊する予定である。 2・西アジア・北アフリカについては,加藤,エルシャズリーを中心に外国人研究チームとして初めての都市世帯調査をエジプトのカイロ首都圏の2地点において実施した。またナイルデルタの農村においても世帯調査,同郷組織の調査を実施した。この地域に関する研究の特色は社会調査とGISという2つの研究手法の融合にある。平成15年度のGIS学会において研究発表を行ったほか,英文雑誌論文,社会科学へのGISの応用に関する英文専門書所収論文の発表を予定している。 3・南アジアについては,谷口がバングラデシュにおける過剰都市化と農村の貧困について歴史的スパンによる研究を推進した。この地域の研究は地域史的な資料を大量に発掘して,定性的・定量的に分析する点で開拓者的意義をもつ。すでに成果として通説的理解とは異なる農村の階層分化にかんする見方を示すなど,新しい責献を含む複数の論文を公刊している。 本研究課題の遂行にあたり,博士・ポスドクレベルの学生のみならず修士・学部上級学生を研究協力者として参加させ,研究プロジェクトと学部・大学院一貫教の有機的結合を図って行くうえで有益な経験を積むことができた。
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