研究概要 |
研究成果を「Cooperative investment of local network owners under an access pricing rule」と「From access to bypass : a real options approach」という2本の論文にまとめた. 第一の論文は,リアル・オプション・アプローチを用いた分析の準備段階として,接続料金ルールと事業者のネットワーク設備投資誘因の関係を分析している.また,事業者の設備投資形態,特に非協力的投資形態と協力的投資形態の経済厚生比較が行われている.主たる結論は,接続料金ルールにおいて(可変的な)接続費用徴収の割合が大きい場合,協力的投資形態のほうがネットワーク設備所有者の投資誘因を高め,それが高い経済厚生を実現してくれることが示される.(逆に,接続費用徴収の割合が小さい場合,非協力的投資形態のほうがネットワーク設備所有者の投資誘因を高め,それが高い経済厚生を実現する.) 第二の論文は,Dixit&Pindyck(1994)の連続時間モデルを2企業のゲームに拡張したものである.ある需要地域に2企業が新規に参入する状況を考えており,追随者は,先導者と同様の2種類の埋没的投資費用を負うという選択の他に,ネットワーク設備投資費用を負わずに接続料金(あるいは接続供給料金)を支払うことにより,先導者のネットワーク設備を使用できることを仮定している.このため,先導者には独占的利潤を得る機会があるという長所はあるが,2種類の埋没的投資費用を必ず負わねばならないという短所がある.追随者には,独占的利潤は得られないが,「接続か,あるいはバイパス建設か」という選択の機会がある.このような長所と短所のトレードオフが,接続料金の水準にどのように影響され,ひいては参入誘因と(特にバイパス建設の)投資誘因にどのような効果を持つかが分析されている. モデル分析より次の結果が得られた.第1に,非協力ゲーム的な競争環境では,協力ゲーム的な競争環境よりも,先導者の参入誘因は強い.第2に,接続が許されていると,バイパス建設の投資誘因は弱くなる.第3に,接続料金は様々な効果を持ち,投資の影響に関しては多様な結果が得られることがわかった.
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