本研究は、電子商取引が自動車流通に与える影響を流通系列化の視点から国際比較したものである。すなわち、流通系列化によって特徴づけられたわが国自動車流通が電子商取引の普及によってどのような影響を受けるかを日米中という国際的な視点から明らかにしたものである。この問題には、同じフランチャイズ・システムにもとづくものであるにもかかわらず、わが国自動車流通が米国と違いメーカーとディーラーが密接な関係にあるといった背景がある。 さて、当初の大方の理解は、電子商取引がわが国自動車流通における流通系列化を崩壊させるというものであった。しかし、3年間の研究期間をへた結論としては、商品一覧性を高めることによる消費者への寄与は認められるものの、流通系列化への影響はほとんどなく、むしろ、電子商取引は、わが国自動車メーカーにワン・トゥ・ワンという形で、新たなマーケティングの展開を可能にするものであることが明らかとなった。この点において、米国の自動車流通における電子商取引の普及と著しい違いがみられる。すなわち、米国においては、ディーラーはメーカーのマーケティングに組み込まれておらず、ディーラーは、独自のマーケティングを展開することができ、その結果、今日のような、インターネット自動車販売仲介会社との関係が確立したのである。また、現在、中国自動車流通においては、電子商取引の普及をみることはできないが、日米自動車流通システムの何れが優位となるかは、今後の電子商取引を巻き込んだ激しい競争の結果として明らかとなる。そして、その際の決定要因の一つが中国の消費者の自動車購買行動にあるが、その行く末はきわめて不透明である。 何れにせよ、電子商取引が急速に進展するなか、自動車流通研究もさらグローバルな視点にたった研究が望まれるところである。
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