本研究では、わが国企業が対外直接投資(FDI)の形で海外進出する際に、投資相手国の如何なる要因を、とりわけ、経済面での脆弱性、社会面での不安定性、政治面での不確実性などといった所謂カントリーリスク要因を、重要視していたかを、種々の統計資料の解析を基本に解明しようとしたものである。 分析の骨子は、(1)日本企業によるFDIのマクロ経済的要因、(2)日本企業によるFDIの企業内(財務)要因、(3)日本企業によるFDIと国際貿易、(4)国際資本移動(形態別)におけるカントリーリスクの反映度合、(5)業態別FDIにみるカントリーリスクの影響度:JBRI格付分析、(6)業態別FDIにみるカントリーリスクの影響度:各国別分析などである。それぞれのテーマにおいて、約30の開発途上国をサンプルとし、また分析期間として1990年前後を主に対象としている。分析手法としては、多重回帰、主成分分析などの多変量解析手法を用いた。 わが国企業によるFDIにあっては、カントリーリスクに対する配慮が余りなされていないこと、とりわけ政治リスクに対しては殆ど考慮されていないこと、また投資規定要因について業種毎に大きなバラツキが見られることなどが知られた。前者からは、グローバル化時代におけるFDIに関わる投資リスクの(特に政治リスクを中心とした)評価システムを構築することの緊急性が示唆された。また、後者からはこの種の研究に際しては個別産業部門毎の分析研究が必要なことが示唆された。
|