研究概要 |
当プロジェクトにおいては、平成13年に中小企の戦略的連携に関する文献調査と統計分析、及び中小企業の組合等に対する聞き取り調査を通じて、中小企業の共同事業の特徴と課題を明らかにした。平成14年度にはそれらの結果に基づいて製造業の中小企業6,300社に対するアンケート調査を実施し、その結果を計量的に分析した。また、経済産業省の「企業活動基本調査」の個票データに基づく分析も行った。 統計の集計データと個票データに基づく分析からは、中小企業の共同研究開発がその後の利益率や生産性上昇率に有意な正の効果を持つことが検証された。しかし、文献調査や聞き取り調査の結果が示唆するのは、中小企業が連携したかどうかよりも、むしろ連携の組織構造と契約内容、すなわち誰とどのように連携したかが、成果を左右するということである。この基本的な仮説は、アンケート調査データの分析によって検証された。 具体的には、共同研究開発に焦点を絞り、その「技術的成功」(成果の特許出願)と「商業的成功」(成果が売上に貢献)をそれぞれ被説明変数とし、組織構造・契約内容を主な説明変数とする重回帰分析(プロビット分析)を行った。分析結果は、基本的な仮説を支持するものである。特に、異業種企業や大企業、取引先企業の参加や協力、過去の連携の経験と継続年数が成功率を有意に高めること、共同事業の成功には自社の研究開発努力が重要であり、インフォーマルで柔軟な組織形態が有利であること、補助金が有意な負の効果を持つこと、費用分担と成果配分の方法が成果を左右することが明らかになった。また、技術的成功と商業的成功の要因が大きく異なることも分かった。 主要な分析結果は組織と契約の経済学によって理論的に裏付けられ、また実務的・政策的にも示唆に富むものである。
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