研究概要 |
本研究は,企業の変遷事由を継承関係を中心に調査し,変遷過程を図式化した企業系譜図を作成するとともに,変遷過程と企業行動を規制する経済的・制度的要因との相互関連性を実証的に明らかにすることを意図した。企業はその設立から消滅に至る過程において,合併・営業譲渡・分社等の結合や分割を繰り返し存続・拡大・発展を図る行動をとるが,その変遷要因を調査するとともに企業行動の結果としての変遷過程を系譜図に示した。 具体的な調査対象企業は六大企業集団の中から選択した46社であり,対象期間は第2次世界大戦後から現在にいたる半世紀余である。また,主に利用したデータは有価証券報告書と各企業のホームページである。 主要な研究成果は以下のようになった。 1.企業の変遷過程の調査と変遷事由の分析にみる企業行動と経済的・制度的要因との相互関連性の確認 2.変遷過程調査に使用したデータの有効性の検証 3.企業系譜図の作成方法の調査・検討及び確定 4.企業系譜図46社の作成 5.企業系譜図の有用性の検証 残された課題として,利用したデータのみでは変遷事由の表記が多様或いは精粗があり,変遷要因分析には若干問題点のあることが判明したので,各社のより詳細な調査による変遷事由の区分けと整理,又は調査社数の増加による量的拡大のいずれか(双方がより望ましい)が必要である。 近年,六大企業集団の影響力が樽れてきた事は事実であるが,戦後の日本経済に与えた影響力は看過できない。我々は今後も継続して,第2次世界大戦後半世紀以上にわたる巨大企業の変遷過程を調査・分析し,企業系譜図を作成しながら,並行して企業行動・経済事情・制度規制の相互関連性を検証したいと考えている。
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