研究概要 |
本研究は,近年そのスピードがより加速している情報技術(IT)の進歩が,企業間の取引関係にどのような変化をもたらしているか,そしてそれが企業の生産性やパフォーマンスにどのような影響を与えたかを明らかにすることを目的としている。さらに,国際的な比較や分析を踏まえながら,情報技術の進歩が企業間関係に及ぼす影響について明らかにする。 研究は,先行研究のレビューを中心とした理論研究と,並行的に行われた実証的研究,および各国企業の事例研究によって,情報技術の発展がもたらす企業間関係の変化の態様,市場と企業の境界の変化について確認した。研究チームが行ったアンケート調査では,日・欧・米企業の経営者を対象として,戦略,組織,利害関係者との関係性などに関わる質問を郵送形式で行った。 本報告書の内容は,この調査結果をもとに、欧州企業および米国企業の経営スタイルと,日本企業の経営スタイルの相違を比較し,グローバル化の潮流の中で日本企業が取り組むべき方向性と,情報技術の進展に伴う企業間関係の変化について考察を加えている。また,当初は日・欧・米グローバル企業を中心にして,情報技術の進展と企業間関係について考察することを考えていたが,グローバル企業にとって,中国への進出が喫急の課題となるという認識の深まりにより,中国進出企業への調査の必要性が出てきた。そこで,研究をより発展的なものとするため,中国進出企業に対する調査を行うことにし,その概要を収録してある。さらに,経済システムにおける資源配分の調整の場として,市場とヒエラルキーの中間に位置するネットワークと称せられる形態についての考察を行っている。
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