研究概要 |
近年,グローバル競争や技術の変化,労働力の人口学的変化などの環境変化に適応し,競争力の維持・向上のため,多数の企業が新たな人事・報酬の制度や慣行,「人材イノベーション」を導入する傾向にある.本研究の目的は,イノベーティブな報酬制度のひとつである,ファミリー・フレンドリー施策の選択・導入の規定要因と,導入後の成果・業績を実証的に解明することにある. 導入モデルを構築するため、人事・報酬制度の導入に関連する理論を使用して実証研究を行った諸先行研究について考察を行った。さらに、日本におけるファミリー・フレンドリー施策の実態を把握するため、企業のファミリー・フレンドリー施策導入の背景,ファミリー・フレンドリー施策の導入状況と課題,「ファミリー・フレンドリー」企業,仕事と家族・生活のイシューに関連する諸問題,その解決方法のひとつとしての組織変革アプローチ,組織文化の変革に成功した事例などについて分析・検討を行った. 筆者が行った「イノベーティブな報酬制度と人事戦略に関する調査(2000年)」から収集したデータを使用して,ファミリー・フレンドリー施策導入の規定要因,ファミリー・フレンドリー施策導入と高コミットメント仕事方式との関係,組織の制度的プレッシャーへの戦略的反応を実証的に分析を行った. 人材イノベーションについての先行研究が数少なく,一般的な理論的フレームワークが存在しない状況である.しかし本研究での実証分析の結果はOsterman(1995)とOliver(1991)の理論的フレームワークの妥当性を確かめるものであった.本研究は人材イノベーション研究発展に部分的には貢献できたと考えられる.本研究は人材イノベーションの導入に重点が置かれている.今後の課題は施策導入後の成果・業績についての分析,人材イノベーションの導入プロセスについて国際比較などを行うことである.
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