研究概要 |
本研究の主目的は、1999年に米国で実施したBtoB型組織間関係のアンケートを日本で実施し、日米でのIT革新の共通点や相違について明らかにするところにあった。具体的には、次の3つのテーマがあった。 1.BtoBの採用フェーズ:M.E.ポーターが明らかにしたサプライヤーや顧客からの一般的な競争圧力要因とBtoBの採用圧力はどのような関係であるのか。 2.BtoBの普及フェーズ:いかなるメカニズムでBtoBが普及するか。とくにプロアクティブ型企業とリアクティブ型企業での普及メカニズムにはどのような違いがあるか。 3.BtoBによる取引依存性の変化:電子商取引によって、サプライヤーと顧客との取引依存性はどのように変化するか。 日本の卸売業者、605社(3,000社に調査票を送付、回答率20.2%)のデータを分析した結果、次の2つの知見が得られた。まず、採用フェーズと取引依存性の分析から、日米に共通する卸売業者の基本ビジネスモデルが導出された。卸売業者は、サプライヤー側、顧客側からBtoB採用圧力を受け、それはBtoB採用後も継続する。BtoB採用圧力とは、環境に付加された新しいタイプの交渉力になることがわかった。次に、普及フェーズの分析から、基本ビジネスモデルにフィットする方策としてのBtoB戦略は日米の卸売業者で異なっており、米国では、顧客側の取引パートナーの拡大戦略、日本ではサプライヤー側の取引深耕戦略がそれぞれ有効であることが明らかになった。両国の相違は、技術環境と経営環境の違いによるところが大きく、日本の卸売業者の戦略は、eマーケットプレースとの戦略的競合を避けつつ、卸売業者本来のもつ強みを生かす戦略と考えられた。
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