研究概要 |
射影空間P^n(n【greater than or equal】4)上の階数2のベクトル束の線束への分解問題を研究し、以下の結果を得た。 1)コホモロジーによる分解定理。P^nのHilbert schemeの行列式多様体における構造を解析し、次の分解定理を得た。定理:EをP^n(n【greater than or equal】4)上の階数2のベクトル束、PをP^nの4次元または5次元の線形部分空間、E^^-=E|PをEのPへの制限とする。このとき、Eが線束に分解するためには、H^1(P, End(E^^-))=0であることが必要十分である。従って、この分解定理により標数零の体上の分解問題は正標数の体上の分解問題に帰着されることが示された。 2)正標数の体上の行列式多様体の構造の研究。標数零の体上では、小平消滅定理、Hodge分解等が成立することにより、行列式多様体の構造を比較的容易に研究できるが、正標数の体上ではこれらは成立しない。正標数の体上成立する次の2つの定理を証明した。定理:Xを正標数の代数的閉体上の非特異射影多様体、LをX上の正豊富線束とする。このとき、次の不等式が成立する:dim H^1(X, L^<-1>)【less than or equal】dim H^1(O_x)。定理:XをEに付随する行列式多様体とすると、H^1(X, O_X)=H^0(X,Ω^1_X)=0。 3)位相的に自明なベクトル束の分解定理(n=4)。Eのチャーン数がc_1=α+β,c_2=α・β(α,β∈Z)と表せるとき、Eを位相的に自明なベクトル束という。定理:α【greater than or equal】(-1√<4β-3/2>)βならば、位相的に自明なベクトル束は線束の直和である。従って、1【less than or equal】β【less than or equal】3ならば、位相的に自明なベクトル束は線束の直和である。 4)Frobenius写像による分解定理(n=4)。体kの標数をp>0とし、Fを次数q=p^n(n∈Z)のFobenius写像とする。定理:c^2_1-4c_2>0とする。このとき、(a)E|XはBogomolovの意味で非安定である。(b)dim Aut(F^*(E|X))=dim H^0(X, qC)。ただし、C=(2a-c_1)H, HはP^4の超平面因子のXへの制限である。(c)Eが線束に分解するためには、dim H^1(X, End(F^*(E|X))【less than or equal】O(q^1)であることが必要十分である。
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