研究概要 |
代数曲線上の直線束Lが特殊(special)である,即ちh^1(C,L)≠0である時,与えられた自然数rに対してh^0(C,L)=r+1をみたすLがどれ位あるかど言う問題が存在する。この問題に関して(Lが特殊でない場合はリーマン・ロッホの定理によりこの問題自体が自明な物になる)h^0(C,L)=r+1をみたすL全体の集合(正確にはh^0(C,L)【greater than or equal】r+1をみたすL全体の集合)W^r_d(C),但しd=deg(L),を解析する,即ちCの構造とW^r_d(C)の多様体としての構造の間の関係を見ると言うのは重姿なアプローチの仕方の一つと思われている。大渕とソウル大学の金昌昊教授はこの種の問題でdimW^r_d(C)を与えた際の曲線Cの決定と言う問題でH.H.Martens及びD.Mumfordの結果を完全な形で拡張する事に成功した。又,別な面のアプローチとしてCがP^1上の奇数次の被覆面である時のG.Martensによる定理(C,がP^1上の奇数次の被覆面である時d【less than or equal】g-1であるならdim W^r_d(C)【less than or equal】d-3rであると言う定理)と言う結果があるが,これはCが特別な幾つかの場合を除くと特に被覆面の次数が奇数でなくても成立する物である。大渕,ソウル大学の金昌昊教授及び山口大学の加藤崇雄教授はこの方面からdim W^r_d(C)を与えた際の曲線Cの決定と言う問題についても結果を得る事に成功した。この結果は最初の段階では必要条件でしかなかったが,消去が非常に困難と思われた楕円曲線の四次被覆面と楕円曲面の三次被覆面を除く6-gpnal curveの場合の消去にも成功した。又平成13年に本科研費の一部がシンポジウム「東アジアの代数幾何」実施に当たっての費用の一部となり平成14年度にはそのProceedings出版に当たっての費用の一部にもなった。又他に、特殊な直線束Lに対する他のアプローチとしてMumford regularityと言う重要な問題があるが,大渕は神奈川大学の本間正明教授と共に,Mumford regularityの問題とCastelnuovoの不等式として知られる不等式に関する普遍量を定義して,その満たすべき不等式,及び不等式のバウンダリーに於いては代数曲線が射影曲面P^2と非常に近い関係にあるヒルツェブルク曲面に乗る事を証明した。
|