研究概要 |
位数muの群Gのk-部分集合Rが位数uの部分群Uに関して(m, u, k, r)差集合であるとはRが右剰余類G/Uの代表系でG-Uの各元がxy^<-1>(x, y∈R)の形にちようどr通りに表されることをいう。(ここでU=1なら通常の対称デザイン)このようなRがあれば分割デザイン(P, B)を,Gの部分集合の族Bとしては{Ra : a∈G}を,点集合PとしてはGを考えることで構成できる。 平成15年度は(m, u, k, r)=(2n,2,2n, n)のときに,差集合が非可解群,とくに単純群群の場合に存在するかという問題について研究した。このため伊藤昇により導入された位数4nの群Gの2n-部分集合Rが左アダマールtransversalであるという概念(つまり、G=R<t>,t^2=1,RR^<(-1)>=nS_1+2nS_22n, S_1, S_2⊂G, R^<(-1)>={d^<(-1)>|d∈R)を考えた。これは自然な条件(*)R≠xR,1≠x∈Gのもとでは(**)RR^<(-1)>=R^<(-1)>R=2n+n(G-<t>)と同値となる。Gの可移置換表現を用いることにより本年度の研究の成果として次を得た。 定理Gを位数4nの群とし,<t>をGの位数2の部分群とする.Rが<t>に関する左アダマールtransversalで条件(*)R≠xR,1≠x∈Gをみたすものとする。このとき,G=[G, G]H, t∈H, t^G⊂Hをみたす部分群HをGがもてば成分が整数のv次正方行列BでB^TB=BB^T=(n/2)Iをみたすものが存在する。ここでv=([G : H](|t^G|-|t^G∩H|))/(2|t^G|)とする。 上の定理の応用として,特に群Gが有限集合Ω上の可移置換群の形で与えられているときは次の命題が直ちに言える. 命題 (G,Ω)を次数r(>4)の置換群で交換子群[G, G]が可移であるとする.位数2の元t7万固定点がr-4個で,|G|のsquare free partがp≡3(mod4)なる素因数を持てばR≠xR(x∈G)なる左アダマールtransversalは存在しない。 この命題を用いることにより非可解群について次の結果を得る。 系群A5,S5,A7,S7,PSL(2,7),PGL(2,7)は左アダマールtransversal Rで条件R≠xR,(1≠x∈G)をみたすものを持たない。
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