研究概要 |
1.非特異複素射影代数多様体上の豊富なベクトル束に対して,零点集合がそのベクトル束の階数と等しい余次元の非特異部分多様体となるような大域切断が存在するという仮定の下で,その零点集合が小平次元1の代数曲面の場合に豊富なベクトル束の構造を完全に決定し,豊富な因子の場合を扱ったSommeseとShepherd-Barronの結果を一般化した. 2.非特異複素射影代数多様体上の多様体の次元より1つ小さい階数を有する必ずしも豊富とは限らないベクトル束に対して,曲線種数を導入し曲線種数が整数になることを証明した.次に,ベクトル束が豊富であれば曲線種数が0以上になることを示し,曲線種数が0になる豊富なベクトル束の構造を完全に決定した,さらに,曲線種数が1となる豊富なベクトル束を分類することにも成功した. 3.2の研究の続きとして,非特異複素射影代数多様体上の多様体の次元より1つ小さい階数を有するベクトル束が非常に豊富な場合に,曲線種数が2以上の超楕円曲線上で消滅するような大域切断を有する非常に豊富なベクトル束の性質を調べた.特に,超楕円曲線の種数が2のときには非常に豊富なベクトル束を分類することにも成功した. 4.非特異複素射影代数多様体上の豊富な直線束を非特異部分多様体へ制限して得られる偏極多様体が2重楕円曲線切断を含むという仮定の下で,その部分多様体上で消滅する大域切断をもち,かつ,部分多様体の余次元に等しい階数を有する非特異複素射影代数多様体上の豊富なベクトル束の構造を完全に決定した.また,この研究の間に,豊富な因子が2重楕円曲線切断を含むという仮定の下で,その豊富な因子を含む非特異複素射影代数多様体を分類していたDel CentinaとGimiglianoの結果を改良することにも成功した.
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