研究概要 |
リーマン多様体の本質的な局所不変量である曲率テンソルR及びその共変微分∇R,∇^2R,...,∇^iR,...と等質性もしくは局所等質性に関わる次のような課題を追求し、成果を得た。 1.Singer不変量:局所等質空間に対し、曲率テンソル及びその共変微分のデータから定まる非負整数があり、これを研究の先駆者の名をとりSinger不変量と呼ぶ。具体的な等質空間についてそのSinger不変量を求めることを課題のひとつとし、Generalized Heisenberg groupsと呼ばれる左不変計量をもつ冪零リー群のあるクラスについて、そのSinger不変量を求めることができた。 これまで求められている等質空間のSinger不変量は0か1であり、Singer不変量が2以上となる等質空間の例を見出すことをひとつの目標として研究を進めてきた。最近、Meusersによって、任意の自然数に対してそれをSinger不変量としてもつ等質空間の例が構成された。これは可換リー群を1次元拡張した可解リー群上に左不変計量を導入したもので、冪零リー群の次に挑むべき対象であった。その意味で先を越されたことは残念である。この例の曲率テンソル及びその共変微分は興味深い構造をもつており、Singer不変量の立場からMeusersの構成した例を特徴付ける問題は興味深い研究課題である。 2.対称性の大きい曲率テンソルをもつ局所等質空間あるいは曲率等質空間の分類 曲率テンソルRに対しRを保つような線形等長変換全体のなすLie群の単位連結成分をG_0とする。このとき、次のような問題に取り組み、成果を得た。"G_0が大きいような曲率テンソルをもつ局所等質空間あるいは曲率等質空間を分類せよ"G_0=SO(r)×SO(n-r) or So(n-2)あるいはG_0が単位球面に推移的に作用する場合などに解答を与えることができた。SO(n-2)の場合が特に興味深い結果となっている。この研究は論文としてまとめられ、Comment. Math. Univ. Carolinaeに発表された。
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