研究概要 |
三成分の反応拡散方程式系に進行座標を導入し,定常問題を考えた。その定常問題に対して特異摂動法を適用した。重要な問題はそこから導出される外部近似問題(連立で不連続な非線形項を持つ楕円型の境界値問題)の解(解は一回連続微分可能)の存在及びパラメータ依存性を調べることである.力学系的に見直すとこの問題は,四次元相空間において二次元安定多様体と二次元不安定多様体をもつ二つの双曲型平衡点があり,この二つの平衡点から出る(あるいは入る)軌道の内で,ある二次元平面に射影したときに連続になっているものを見つけることに対応している。まずは数値計算を行い,パラメータを動かしながら各多様体の特徴的な挙動を調べ,二つの平衡点をC^1-級で接続する軌道が存在していること確認した。次に,この情報をもとに厳密に多様体のパラメータ依存性を調べ,力学系理論を利用し,二つの平衡点をC^1-級で接続する軌道を考察したが,残念ながら,完全な解決は出来なかった。人工的な仮定を設けることによって,この軌道の存在を示した。さらにこの結果を用いて,元の問題の解の存在とその安定性も考察した。また,空間二次元の問題に対して,球面対称な座標系を導入し,空間一次元の場合に考察した外部近似問題の性質を利用して球面対称な特異摂動解(局在定常解)の存在を示した。但し,一部において人工的な仮定を設けている。さらに,この解のまわりでの線形化固有値問題を考察した。数値計算によって,非線形項に現れる2つのパラメータを変化させた時,第0モードと第1モードの不安定化が起こることを確認した。第0モードの不安定化は定常解からの進行波解の分岐を意味しており,第1モードの不安定化は球面対称な定常解が不安定になり,非対称な定常解の分岐を意味している。2つのパラメータをどう動かすかによって,上記の不安定化が個々に現れたり,同時に現れたりする(複合解の存在)ことを確認した。残念ながらHopf分岐を起とすようなパラメータを見つけることは出来なかった。 特に,第0モードの不安定化を起こすパラメータに注目すると,この課題の目的である進行スポット解が安定に分岐していることも確認できる。しかし,論理的にそれらを示すことはかなりの困難を伴うので,現在は数値的検証法のテクニックを利用して,安定な進行スポット解の存在証明を行っている。
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