研究概要 |
多変量データが,投薬後の適当な数時点で血液中のある成分が観測されるような繰り返し測定値によって得られる場合,母平均ベクトルに対して,薬物動態モデルのような構造が仮定されることになる.百武は繰り返し測定値に対して適当な非線形モデルが仮定されるような複数の母集団がある場合,モデルのパラメータの非線形関数を比較するための同時信頼区間を,テーラー展開を適用することにより近似的に与えた.これは薬物動態モデルにおいて非線形関数の最大値による薬効の比較など応用の面でも重要であり,実際に適用できなければ意味がない.そこで,薬物動態モデルやロジスティックモデルを用いてシミュレーションにより近似の精度を検証し,良好な結果を得た. また,非線形モデルにおいてランダム効果があるときのパラメータの比較に対するシェフェ流の同時信頼区間も近似的に与えた.ここでは,従来の推定法では,共分散行列の推定量が正定値行列とならないことがあり不安定であるため,同時信頼区間の構成ができないため推定アルゴリズムを改良した.そのときのパラメータの推定量が漸近正規性をもつことを示し,極限分布により同時信頼区間を構成した.さらにシミュレーションによる検証もおこなった.また,ある木の種と保存法の違いによる二酸化炭素の摂取量の比較を,周囲の二酸化炭素濃度を変化させたときのデータを用いて数値例を与えた. 内由は確率微分方程式によって定義される拡散過程において,標本が等間隔で離散的に得られる場合のパラメータのminimum contrast推定量が一致性,漸近正規性,漸近有効性をもつことを示した.また,M推定量の漸近的性質も与えた.
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