研究概要 |
・2元連立発展方程式であって,ソコロフとシャバートの意味で形式的に可積分なもの,すなわち強対称性と強保存則を許容するものを、数式処理システムREDUCEを用いて数え上げることが研究の目的である.しかし,このような問題を一般的な状況で考えることは非常に困難であるので,次のような仮定を設ける.(1)「時間発展は従属変数の空間変数に関する微分多項式で与えられ,さらにそのような微分多項式は微分に適当な重み(weight)を与えると,その重みに関する同次多項式となる」.さらに,仮定(2):「時間発展は,空間変数に関する最高階の導関数について定数係数線形である」を付けることにより,数え上げの計算は,ようやくわれわれの手の届く範囲の問題となる.本研究では4階の発展方程式で,上記の条件(1)と(2)を満たすものを特定の微分重みに対して数え上げることを行った.その計算はそのような仮定をしても尚膨大であり,まだ計算は完成していない.計算がほぼ終了しているのは微分重みが1の場合のみである. ・発展方程式の保存則を調べるには,従属変数とその空間微分で生成される微分多項式環における形式的変分解析の手法を用いる.このような微分多項式をゲルファント・ディキー変換すると対称多項式が得られ,保存則を調べるために重要なオイラー作用素の核を求める問題は,オイラー群とよばれる有限群の不変式を求めることに帰着する.そこで,一般の有限群の不変式環の生成元を求めるストルムフェルスのアルゴリズムを数式処理システムAsirに実装した.この実装結果を用いて保存則を調べるのは,今後の課題である. ・2次のダルブー・ラメ方程式のモノドロミー群を具体的に計算した.また,ダルブー・ラメポテンシャルのスペクトル保存性を詳しく調べた.また,そのようなポテンシャルの特異点の位置を具体的に計算する手法をあわせて確立した. ・離散パンルベ方程式にはアフィンワイル群が双有理的に作用する.特にq-パンルベIV方程式と呼ばれる離散パンルベ方程式について,その対称性がA^<(1)>_2型拡大アフィンワイル群であることを示し,さらに,この事実を拡張してA^<(1)>_<m-1>×A^<(1)>_<n-1>型のアフィンワイル群対称性をもつ離散力学系の階層を構成し,その階層がq-KP階層の簡約化により得られることを示した. ・二つの可解カオス系である,算術調和平均とアルゴリズムとウラム・ノイマン写像が行列式解をもつことを示した.
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