研究概要 |
本研究においては,ウェーブレツト型の関数列であるFrazier-Jawerthのψ-変換を用いた重み付き関数空間の特徴付け,及びその偏微分方程式への応用を研究した.当初の研究目的である多重線型作用素の研究を完成することはできなかったが,本研究の手法を用いて,負のポテンシャルを持つSchrodinger作用素の負の固有値のモーメント和に関するLieb-Thirringの定理の一般化を得た.この結果は,Schrodinger作用素におけるラプラシアンをある高階の退化楕円型作用素に置き換えた形の結果であり,Egorov-Kondrat'evの定理の一般化である.証明には,負の固有値の個数の評価に関するCwikel-Lieb-Rozenbljumの不等式の一般化が用いられる.また低次元の場合に,高次元の場合とは異なる手法を用いて,Lieb-Thirringの定理の一般化を証明することができた.この低次元の場合にはCwikel-Lieb-Rozenbljumの不等式の一般化が使えないので,従来の方法とは異なる計算法を考案した.すなわちある条件を満たすdyadic cubes上における積分の評価と,作用素の固有値に相当する量との関連が重要となる. また類似の手法を用いて,Sobolev-Lieb-Thirringの不等式の一般化を証明した.この結果は,従来の不等式に重みを付けた形のものであり,Ghidaglia-Marion-Temamの定理あるいはEdmunds-Ilyinの定理の一般化である.証明は前述のLieb-Thirring不等式の一般化と同様であるが,必ずしも作用素と関連付けないために異なる計算法が必要となる.この結果は非線型方程式のアトラクターの次元を評価する問題での応用が期待される.
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