研究概要 |
当該研究課題に関する研究実績の概要は次の通りであり,成果は学術雑誌等に発表された. 研究代表者堪甚は,解析関数の作る古典的なハーディー空間に対して成り立つ,いわゆるペーリーの不等式を,ヤコビ多項式の作る直交系に対して証明した.証明の鍵は,近時調和解析において得られた,実ハーディー空間の双対空間がBMO空間となると言う定理である.この定理によって,これまで複素解析的手法によって証明されていた定理が実解析的手法で解析出来るようになった.我々は,この考えを直交関数系の調和解析に有効と見て取り前述の定理を得た.上述の双対定理は,言い換えると実ハーディー空間のアトム分解である.このアトム分解を使って,古典的なハーディー空間に対して成り立つもうひとつの不等式,ハーディーの不等式をヤコビ多項式の作る直交関数系へと一般化した.更に代表者は,チェザロ作用素,一般にハウスドルフ作用素を研究した.そして,ある種の条件の下でハウスドルフ作用素が,1より小さい指数を持つ実ハーディー空間上で,有界な作用素となることを示した. また,研究分担者は各々の立場から以下の成果を得た.土谷は拡散過程のディリクレ形式の収束性を,基礎となる測度を固定せずに論じた.一瀬は,作用素ノルムでの自己共役トロッター・加藤積公式に関して,以前に得ていた結果に,更に新しい結果を加えた.また,極座標表示のディラック方程式の基本解を構成し経路積分の問題を考察した.佐藤は,積分核に単位球面上でLlog L条件を仮定すると,これにより定義されるマルチンキービィッツ関数がweak(1,1)評価を満足することを示した.藤解は,特殊ワイエルシュトラス・ピー関数に係数を持つリッカチ微分方程式を研究し,その解が有理型である事を示した.
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