研究概要 |
今回の研究では,まずサイズと時間に依存した成長率を持つ個体数変動モデルに対して,与えられる全てのデータに対する解が連続的依存性の研究を行った。初期値に対する依存性と死亡関数や誕生関数に対する依存性は比較的簡単に示せていたのであるが,成長率に対する依存性は本質的に難しい問題を含んでいる。方程式を解く方法は,いわゆる特性曲線法と呼ばれるものであるが,この特性曲線は成長率によって決定されるので,成長率を摂動させると特性曲線自体が変化してしまうからである。この研究は,方程式の安定性という意味で大事な意味を持つとともに,成長率がサイズと全個体数に依存するモデルの研究への応用と本質的な意味を持つ。 次に成長率がサイズと全個体数に依存するモデルの研究を行った。もともとこれは、森林や農園の植物の個体数変動を記述する例として、提唱されたものであるが,ここでの研究はそれをさらに一般化したモデルで,正値解の存在と一意性に関する結果を得た。これに関しては2002年、香港で開かれた国際会議において発表した他、論文にまとめ現在投稿中である。 筋収縮は、太い繊維ミオシンと細い繊維アクチンが互いに滑り込むことで起きる。その滑り込みは、ミオシンから伸びるクロスブリッジがアクチンに結合して、それがバネの役割を果たすことによって起きる。この結合しているクロスブリッジの数(相対密度)の時間変化を表したのが筋収縮モデルであるが、今回の研究では、双曲型の輸送方程式系について考えた。従来の研究では、単独の方程式であったのをシステムに拡張した。このことにより,クロスブリッジの結合と解離だけの2状態モデルから2種の結合状態,2種の解離状態の4状態モデルを含むより一般的な取り扱いが可能となった。これに関しては現在論文にまとめ投稿中である。
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