研究概要 |
本研究はC^n内の擬凸領域上の∂^^-問題の解を積分公式を用いて構成し,その解を評価することと,擬凸領域の部分多様体上の正則関数を,積分公式を用いて領域全体の正則関数に拡張し,拡張した関数を評価することである.∂^^-問題では楕円体について研究し,部分多様体からの正則関数の接続問題においては,滑らかでない境界をもつ有界強擬凸領域について研究した.研究方法としては,C^n内の滑らかな境界をもつ有界強擬凸領域Dの境界上の積分公式をストークスの公式を用いて,D全体での積分で表し,滑らかでない境界をもつ強擬凸領域は滑らかな境界をもつ強擬凸領域列{D_m}で近似できることを利用して,X={z_n=0}∩D上のL^P正則関数fをX_m={z_n=0}∩D_m上の積分によって表す.これはHenkin-Leitererによる手法を用いたものである.積分核はDにおいて正則であるから,fはD上の正則関数Fに拡張できる.FがDにおいてL^Pであることは,Schmalzによって得られた特異点の近傍での体積要素の評価式を用いた.また,部分多様体上のH^P関数のH^P接続も可能であるように思われるが,境界が滑らかでないため,通常の意味でのH^P関数は定義できない.これに関してはかなりの準備が必要で,今後も研究を継続したい.また,複素楕円体と実楕円体上の∂^^-問題は積分公式を利用して解明が進んでいるが,実楕円体の場合はShawによる∂^^-_b問題の解の最適評価が与えられており,この証明方法を用いて,∂^^-問題の解の最適評価を得た.積分公式を中心とした研究は1970年のHenkin, Lieb, Ramirez等の研究に始まり,現在は多変数関数論の重要な研究分野の一つになってきている.近い将来,積分公式と正則関数の接続を中心とした多変数関数論の専門書を出版するつもりである.
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