研究概要 |
本研究ではNewton粘性や摩擦による粘性効果を持つ一次元圧縮性粘性流体の時間大域的な挙動を調べることを主目的とした.それらの方程式は双曲型粘性保存則系と呼ばれる連立の系で表現され,粘性衝撃波,希薄波,散逸波および接触不連続に対応する波などの非線型波を持つ.Newton粘性を持つ圧縮性Navier-Stokes方程式に対しては,主に強い希薄波の大域安定性を示す結果を求めた(Nishihara-Yang-Zhao).同様の結果は,p-システムに対するJin-Xin relaxationモデルに対しても得られた(Nishihara-H.Zhao-Y.Zhao).また,半空間におけるInflow問題では,境界層解や希薄波への漸近に関しては既に研究代表者と分担者による結果が得られていたが,粘性衝撃波が絡む場合にもある種の条件の下で粘性衝撃波と境界層解の重ねあわせに漸近することが得られた(Huang-Matsumura-Shi).粘性衝撃波からの擾乱の積分平均がゼロでない場合や粘性衝撃波と希薄波の重ね合せに漸近が予想される場合は依然として未解決として残っている. 一方,Porous media中の1次元圧縮性流の方程式は粘性効果が摩擦によって生じ,線型dampingをもつp-システムとして表わされる.この系のCauchy問題の解はDarcyの法則から得られる放物型の方程式の解(これを散逸波と呼ぶ)に漸近することが分かっていて,その漸近を精密に考察した(Nishihara)結果,1次元および3次元2階消散型波動方程式と対応する熱方程式が密接に関連することが分かった(Marcati-Nishihara, Nishihara).その結果は半線型消散型波動方程式の大域解の存在と有限時間内の解の爆発に関する考察に応用された.その際の半線型項のcriticalな指数は半線型熱方程式に対する結果とと一致していることも説得力を持って示されたといえよう.この現象は,他の次元についても成立することがNarazaki, Ono, Ogawa-Hosonoらによって示された.一般の次元でのcritical指数についてはTodorova-Yordanovによる.また,抽象的な設定でも同様の現象が得られていて(Ikehata-Nishihara),消散型波動方程式に関連する考察に示唆をあたえる基本的な結果が得られたものと考えている.
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