研究概要 |
本研究の目的は、コンパクトで若い電波銀河のサイズとスペクトルを観測して、進化初期段階にある電波銀河の環境を統計的に調べることである。自由-自由吸収(FEA)という現象を利用して低温・高密度のプラズマの分布を調べるという手法を、スペースVLBIを用いた高い空間分解能の観測に応用した。 その結果、電波銀河NGC1052では低温・高密度プラズマが中心領域に半径1pcのトーラス(円環)状に分布していることを発見した。光学的厚みは中心核方向でもっとも大きく、電子密度は2.5×10^4【less than or equal】n_e【less than or equal】2.6×10^6cm^<-3>,電子温度は10^4【less than or equal】T_e【less than or equal】4.9×10^6Kという値が得られた。中心核から西側の光学的に厚い領域(1GHzにおいてγ>100)は水メーザースポットの分布と一致することから、トーラス内部に分子ガスが存在していることがわかった。また、水メーザーの速度勾配から、トーラス内に中心へ向かう降着流があることが分かった。この成果についてはKameno et al.2003,PASA,20,No.1に受理され、印刷中である。 計18個の若い電波銀河について5つの周波数で観測を行った結果、電波銀河では自由-自由吸収の光学的厚みが二つの電波ローブ方向で比較的対称であるのに対して、クェーサーでは非対称であるという、有意な差が見られた。これは、電波銀河ではジェットの軸が視線に対して垂直に近いのに対して、クェーサーではジェットの軸が視線となす角が小さい、という傾向で説明ができ、Barthel(1989)ApJ,336,606による電波銀河とクェーサーの統一モデルを支持している。この成果については、Kameno et al.(2003),PASAに投稿中である。
|