研究概要 |
現存の解析手法では困難であった高エネルギー電子と航跡場の自己無撞着解析の可能性を有する時間領域境界積分方程式法(TDBEM)に関する開発を行なった. 現有のシングルCPU環境用のTDBEMコードのMPIパラレルスキーム化・メモリ分散化の後,実用的な数値モデルを用いた2次元コードの精度等の妥当性の詳細なチェック,そして,TDBEMコードの3次元化及びそのMPI並列化を中心に,粒子の軌導計算も考慮に入れた時間領域境界要素法ベースの航跡場コードの開発を行った. まず,これまでシングルCPU環境では取り扱える問題に限りがあり必ずしも実用的な数値モデルにおいて定量的に計算結果をチェックすることができなかったのに対し,MPIパラレル化によって取り扱いが可能となったピルボックスキャビティ形状という標準的な数値モデルを用いて実績のあるFIT法のコードの結果と比較し,ウェークポテンシャル,領域内の場の時間的な挙動など航跡場解析における重要なデータにおいて,TDBEMコードが十分実用に耐えられる精度の解を与えることができることを確認した.そして,これに基づき,3次元,2.5次元コードの開発及びそれらのMPI並列化を実施した. また,現実の問題への同コードの応用として,ドイツDESYにて開発中のリニア-コライダー・メインライナックの超伝導空洞形状における航跡場解析に同コードを適用し,これもFIT法のコードの結果ともよい一致が確認された.以上より,今後の航跡場解析に対し,FIT法以外の有力な解析手法のオプションとして本研究計画において開発したTDBEMを加えることができた.また,同コードは粒子軌道解析と組み合わせることで自己無撞着解析にも容易に適用可能であり,今後の高エネルギー粒子加速器の解析に大きく貢献できるものと考える.
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