研究概要 |
質量数130領域の原子核は,高スピンアイソマー,バックベンディング,3軸非対称変形,カイラルバンドなど興味深い現象が見つかっている。また,この領域のベータ崩壊および電子捕捉率は超新星爆発などで作られる元素の存在率などを正しく予測するのに必要なデータを提供する。われわれが注目した原子核は,振動核でも変形核でもない中間の遷移核であり,従来の平均場的な枠組みでは非常に取り扱いが難しい原子核である。このため、原則的には角運動量0と2の集団運動対を用いて、多体状態を構成し、奇核については、対から外れた一粒子をもちいて、これをあらわすこととした。我々の方法は、もともとの殻模型空間を簡素化しながら、角運動量・粒子数を保った完全に量子力学的な取り扱いである。 ^<132>Baについては、基底バンド状態、準ガンマバンド、バツクベンディング領域を再現した。また、電気4重極遷移についても、バックベンディング領域を含め正しく実験値を再現し、磁気双極子モーメントの値から、中性子の整列によりバックベンディングが引き起こされることを確かめた。Xe同位体についても同じような試みをし、実験を再現した。また、最初の10^+状態が、最初の8^+状態よりも低く現れることを理論的に予言し、なぜ実験の10^+状態が長寿命のアイソマーになるかの理論的説明を与えた。この領域の奇々核の高スピン状態では、カイラルバンドを作るのではないかという予言があったが、我々は^<132>Laについて理論計算を行い、中性子と陽子の角運動量は直交しているというよりも、むしろ平行になっていることを理論的に予言した。ベータ崩壊に関しては予備的な計算ではあるが、我々の模型が十分実験を説明しうる模型であることを確認している。
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