研究概要 |
一般相対論的数値シミュレーションコードを用いて,連星中性子星の合体の数値シミュレーションを実行し,その際に放射される重力波について調べた。まず,シミュレーションコードに残っていたいくつかの不安定性を取り除くため,コードの改良を行った。座標条件として,時間座標に対してmaximal Slicing条件,空間座標に対しては,pseudo-minimal distortion条件を用いて非常に安定なシミュレーションコードが確立した。その際,Ricciテンソルの計算で,pseudo-minimaldistortion条件を利用して空間メトリックの2階微分をうまく処理することが重要であることが明らかになった。また,数値境界での重力波の反射を押さえるために,差分かの方法なども工夫した。それでも数値境界が中心の星からかなり近くにある場合には問題となったが,グリッドサイズを大きくすることでほとんど解決した。実際のシミュレーションは,デカルト座標で,475×475のグリッドサイズで行った。必要なCPU時間は,1つのパラメータセットあたり富士通VPP5000の32ノードを使い,約100時間であった。 さらに,放射される重力波について,ゲージ不変な抽出を行った。また,これによる重力波波形と単純な計量テンソルのTT成分を比較すると,定性的にはほとんど変わらないことも明らかになった。また,放射される重力波のスペクトルから最終的に形成されると予想されるブラックホールの準固有振動の存在を議論した。ただし,確定的な議論をするためには,様々な初期条件からシミュレーションを行う必要があることがわかり,これについては今後の問題として残された。 今後の発展としては,初期条件の改良とゲージ不変な重力波抽出法の改訂が考えられる。さらに,座標条件を少し変えることにより,必要な計算時間がかなり短縮できることも予想できており,これに関したさらなる研究を継続していくことは重要である。
|