研究課題
基盤研究(C)
本計画の主な目的は次の3点であった。1.原子核のガモフ・テラー巨大共鳴状態からスピンに依存するランダウ・ミグダル パラメータを決定し、原子核のスピン構造と関連する問題を理解する。2.相対論的重イオン反応で発見された2重巨大共鳴状態の構造を、和則を用いて理解する。3.巨大共鳴状態を通して、原子核の相対論的模型と非相対論的模型の違いを明らかにする。目的1については、実験値の誤差について格段の進展があり、最終的にパラメータを決定し、その結果は目的3と密接に関係することを示した。目的2については、2重巨大共鳴状態のみならず、3重巨大共鳴状態に関する新しい和則、さらに、異なる多重共鳴状態の励起エネルギーと遷移強度の間に、模型に依らず成立しなければならない新しい関係式を導出した。目的3については、我々を含め、アメリカ、ドイツ、フランス等のグループが、過去数年間にわたって研究してきた巨大共鳴状態に対する相対論的模型は、現象論的には巨大共鳴状態をよく説明するものの、理論的には大きな問題を抱えていることを示した。それは、この模型が、和則を満たすためには、負の励起強度を必要とする点である。我々は、その原因が発散項の取り扱いに問題があることを明らかにし、正しい取り扱いの例を、ガモフ・テラー遷移に関する和則について示した。この結果は、今まで数年間行われてきた原子核の相対論的な模型による数多くの計算結果を全て見直す必要があることを要求する重要なものとなった。成果は既に公表され、現在レビューの投稿を依頼されている。本計画の最終年度に得られたこの成果は、目的3)の研究を次期計画へ引き継ぐための大きなステップとなった。
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