研究概要 |
超重元素合成の実験は、適用できる核反応理論がなかったため、経験的に行われてきました。より重い元素を作ろうとするとその生成率が、急激に減少し、より長い実験時間を必要とすることが知られています。従って、今後は、信頼に足る理論的予言が決定的に重要となります。代表者が提唱した"原子核の集団運動に対するLangevinの方法"(Y.Abe et al.,J. de Physique,47(1986) C4-305)は、すでに、重イオン核融合、及び分裂反応においてその有効性を証明してきました(Y.Abe et al.,Stochastic Approaches of Nuclear Dynamics, Phys.Reports 275,(1996)49-196)。この研究課題は、その展開として、超重元素合成の理論へ挑戦したものです。第一に、最終的な超重元素に対する残留断面積を予言することを可能にする独創的理論、Two-Step Modelを構築しました。これは、現在、正統的な理論模型であると認知されています。研究代表者は、昨年、サンフランシスコ郊外で開催された"第二回重元素の化学と物理"の国際会議で、核反応理論のIntroductory Reviewに於いてこれを中心に紹介しました。さらに、いわゆるCold Fusion及びHot Fusion Pathsによる既存の実験データを再現することに成功すると共に、より重い新元素に対する予言を行いました。この予言は、最も信頼できるものとして多くの実験研究者の実験計画策定に参考にされています。現在、理化学研究所を含む世界の幾つかの研究所において実験的検証が行われています。なお、統計理論に基ついて、複合核の冷却過程の時間変化を追跡可能にする新しい電算機コードKEWPIEを開発し、公開しました。
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