研究概要 |
平成13,14,15年度の三年間にわたる本研究の研究成果は次の通りである。 I.ブレーン世界シナリオの研究:我々の4次元世界が実は、より高次元時空中での3-braneであるというブレーン世界シナリオを研究すべく、一番簡単な5次元時空を考え、余分な1次元がオービフォルドS^1/Z_2にコンパクト化した場合の、超共形テンソル計算則(superconformal tensor calculus)を与えた。特に、境界4次元面上の物質場とバルク超重力場物質場との超共形対称な結合のさせ方を一般的に明らかにした。また別の論文では、5次元のテンソル超多重項に対し、ゲージ多重項と非ゲージ多重項の2種類があることを初めて明らかにし、そのoff-shell超共形テンソル計算則を全面的に与えた。さらに、Bergshoeff-Kallosh-Van Proeyenの「特異時空上の超対称性」の理論を完全にoff-shellで定式化した。これにより、Randall-Sundrumのブレーン世界シナリオの場合に要求される境界面上のtensionの大きさとバルクの宇宙項の大きさの間の特殊な関係式が、超対称性の要請から自然に出てくること、またこれとは異なるBagger達の定式化では、その関係式が超対称性から要求されずファインチューニングになることも明らかにした。 II.超対称E6統一模型におけるHiggs場とquark/leptonの質量・混合:いわゆるtriplet-doublet splittingの問題に対して、通常のHiggs doubletだけがPseudo-南部-Goldstone粒子であるため軽くなるのだというアイデアを、E6にもとづく大統一理論の枠内で考察した。その結果、E6大統一理論の場合には、Higgs doublet以外に必ず他の軽いPseudo-南部-Goldstone多重項が現れること、また、それがゲージ結合定数の統一を破らないためには、SU(5)の10+10^*表現になるのが唯一の可能性であり、現在の陽子崩壊の実験的boundとぎりぎり矛盾しないこと、を明らかにした。 一方、1)クォーク・レプトンの質量行列が、異常U(1)電荷により冪の与えられる因子化されたFrogatt-Nielsen形をとること、および2)このU(1)電荷がSU(5)GUTの構造を持つこと、の二つの仮定をすれば、先ず、up型、down型クォークの質量データが必然的にニュートリノの大きな2-3世代間混合を意味することを示した。さらに太陽と大気ニュートリノの二乗質量差の比のデータをインプットすれば、1-2世代間混合もまた必ず大きくなるということ、すなわちbi-large混合を導くことを示した。同時に、これがE6にもとづく超対称大統一模型を支持しているという議論を与えた。
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