研究概要 |
1.平均場近似によるストレンジネス原子核の構造計算 密度依存型で有限レンジを持つバリオン間有効相互作用を用いて,平均場近似によるハートリー・フォック(HF)法および密度依存ハートリー・フォック(DDHF)法のハイパー核の理論計算を実行し,え^5_ΛHeおよび^<17>_ΛOの構造を調べた。そしてΛ粒子を原子核に付け加えることによって起こる芯核の偏極効果について議論した。その結果,DDHF計算では,偏極(組み替え)によるエネルギーの変化量ΔE_Nが,Λ粒子の(0_S)状態で約2MeV,(0_P)状態で約1MeVになることが分かった。これは,原子核内の核子が組み替えを起こして,陽子や中性子の一粒子エネルギーの準位が変化するためであり,ΔE_Nの大きさが核子間の有効相互作用のstarting-energyの依存性やΛN間の有効相互作用の性質に強く影響していることを示した。 2.ストレンジネス原子核の生成と応答スペクトル DWIA理論計算の枠組みの中で,新しく"最適フェルミ平均近似"を提案した。この方法をよく知られているΛハイパー核の(π^+,K^+)反応スペクトルに適用して実験データとの比較を行い,この近似の妥当性を調べた。その結果,理論値は極めてよく実験データと一致しており,"最適フェルミ平均近似"で得られた"最適"t行列のエネルギー依存性の性質によって説明できることを示した。さらに,いまだ未知であるΣ^-原子核間の相互作用の特徴を実験データから抽出するために,(π^-,K^+)反応によるシグマハイパー原子核の生成スペクトルにも適用した。その結果,Woods-Saxon型ポテンシャルとして実部は約+20〜+40MeVの斥力的に,虚部は約-10〜-30MeV程度になることを示し,さらにΣ^-原子のX線データを再現するポテンシャルでも(π^-,K^+)スペクトルを説明できる可能性があることを指摘した。また,いままで成功している(3N-Δ)+(3N-Σ)結合モデルを使って静止K^-法による^4_ΛHeの基底状態の生成を求め,Σ経由で生成される割合が約20%にもなることを予測した。
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