研究概要 |
非平衡グリーン関数を用いて内殻励起のX線光電子分光法、X護吸収微細構造(XFAS)の第1原理からの多体理論を構築した。その理論的枠組みで光学ポテンシャルの影響下でおこる光電子の減衰、さらには共鳴効果、intrinsic, extrinsicロスを完全な量子力学によって計算が可能となった。特に共鳴効果に関しては、これまで様々な議論で混沌としていた多原子共鳴光電子放出(MARPE)の現れる条件について詳しく解析し、逆にこの共鳴構造が観測される場合はX線吸収原子の周りの対称性についての情報を得る事ができる事を指摘した。さらに、量子電気力学へと拡張する事によって相対論的多体効果を取り入れたX線光電子分光法、X線吸収微細構造(XAFS)理論を展開する事ができた。この理論では、Getszteyの展開を遅延グリーン関数に適用し、非相対論的1電子グリーン関数と相対論補正項を用いて定式化でき、従来の多対理論の財産をそのまま使う利点をもつ。これによって,今までは相対論的解析は1電子近似の枠内でしか与えられていなかったが、多体理論の基礎的理論が与えられた事になる。その事によって、重い原子を含む物質の磁気的な性質(本質的には相対論効果)の詳しい解析をX線磁気円2色性(XMCD)を用いて解析する事が可能となった。また従来その起源が定かでなかった輻射場遮蔽がこの理論的枠組みによって自然に導かれる事を示し,光の散乱も取り入れたX線光電子分光法、X線吸収微細構造(XAFS)の新しい基礎理論を提示した。
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