研究概要 |
アナターゼ型単結晶を化学蒸気輸送法で作成した.Nbドープ結晶は(Ti,Nb)O_2を適量原料に用いることによって得ることが出来た。結晶は灰色で2eVに幅広い吸収帯を持つスペクトルであった.電気的性質はn型で,キャリア濃度はヘリウム温度まで一定であった。これはNb不純物準位が非常に浅いか、あるいは伝導帯に入っていることを示している。ESRより得られたg因子の大きさ、異方性は電子がdxy軌道にあることを示している。純粋な結晶を酸素圧1MPa,或いは水素ガス流中で熱処理することで酸素欠陥の制御を行った。その結果,吸収スペクトルからはas-grown(紫色透明),酸素処理400℃(黄色透明),同600℃/80hr(無色透明),水素処理(紫、青色透明)となり、これらの色を持つ結晶が各種の熱処理で得られ,且つ相互の変換も可能であることが分かった。得られた結晶についてESRの測定を行ったところ、as-grown、水素処理試料では同じg値が得られ,g値の結晶軸に対する角度依存性から、Tiの位置に中心を持つdxy軌道でESRスペクトルがよく説明できることがわかった。無色透明のアナターセ結晶はESR信号が観測されないことを考慮すれば,欠陥は余分に入った水素原子の電子がTiにトラップされる、あるいは伝導帯の底にあり、そのためにTi^<3+>のESR信号が得られたと結論できる。一方,黄色透明試料はこれらとは全く違ったESRスペクトルであり、酸素欠陥による物と予想された。これらの試料の時間分解発光スペクトルから酸素欠陥準位は伝導帯の底ばかりでなく、伝導帯の深いところにも準位を作り、後者の準位を経由した速い緩和が存在することが分かった。 新しいTiO_2相を求めて、ダイアモンドアンビルを用い単結晶,及び粉末について圧力誘起相転移をラマン、および軌道放射光によるX線回折で測定した.アナターゼ単結晶では4.3GPaでTiO_2高圧相に転移し,一方,粉末試料では4.5〜8GPaの範囲で徐々に高圧相に変化した.これらの新しい相の構造パラメータを決定した。
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