研究概要 |
当初の具体的目標を要約すると,(1)ステップダイナミクスを調べるための格子モデルの構築,(2)短距離での弾性相互作用と自己組織的島構造の解明,(3)連続体モデルの導出,ということであった. 1.(1)と(3)に関して,Si(111)のように一様な構造を持つ表面でのモデルを,微斜面での表面構造がテラスごとに交代するSi(001)微斜面や,ステップをはさんで2相が共存する構造相転移温度近傍でのSi(111)微斜面などに拡張し,その格子モデルを構成した.格子モデルでのモンテカルロシミュレーションや,これから導かれる連続体モデルの研究によって,これらの系での結晶成長中ならびに外場による吸着原子のドリフトのある系でのステップの蛇行やバンチングの現象を統一的に説明した.この中で表面のステップパターンの決定にステップ間の斥力相互作用が非常に重要であることが明らかになった.またいくつかの予言も行ったので今後の実験的検証が期待される. 2.比較的単純な表面での島状構造の緩和を理論的に研究し,Si(111)での実験と比較しよい一致を見た.また前進するステップの蛇行不安定性についても実験とのよい対応が得られた. 3.(2)の弾性相互作用を調べるために,結晶格子における原子間の結合エネルギー,原子間の力,原子変位に対する弾性力を取り入れた格子モデルを考案した.2次元格子モデルで,グリーン関数法と数値計算を活用し,近距離,中距離でのステップ間相互作用を求め,単純な連続体弾性論の適用限界と問題点を明らかにした.また,このモデルを使ってヘテロエピタキシャル系の吸着物結晶の形状によるエネルギーの違いを計算し,隣接原子間の力と格子不整合度の関数として薄膜の成長様式を理論的に予想した.
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