研究概要 |
本研究の目的は走査型プローブ顕微鏡(SPM)等により強誘電体多結晶試料表面の持つ分域やグレイン構造などを可視化すること、そのような多結晶状態の物性を測定すること、特に形状を認識した上で各部分での物性測定も目指した。対象物質は、多結晶試料としてロッシェル塩NaKC_4H_4O_6・4H_2O、チタン酸バリウムBaTiO_3、非晶質及びそれを結晶化させた多結晶試料としてチタン酸ビスマスBi_4Ti_3O_<12>、ニオブ酸リチウムLiNbO_3である。また研究の後半ではハライド系新強誘電体探索研究も行った。主要な成果は下記の通りである。 (1)NaKC_4H_4O_6・4H_2Oの表面SPM像の温度依存性観察を行い、分域発生消滅の過程を明確に観察することに成功した。 (2)BaTiO_3の2つの正方晶90°分域の交叉状態での表面形状をSPMで可視化して、その形状を解析することで、格子定数が理想的な状態から大きくずれていることを示した。 (3)Bi_4Ti_3O_<12>およびLiNbO_3非晶質試料の結晶化過程の表面観察と誘電測定を行った。両物質ともにSPMによる表面観察では、結晶化温度以下の熱処理でおこる微妙な固さ分布の変化を可視化した。前者では、特に各種熱処理試料においてD-E履歴曲線の観察を行った結果、結晶化により分極の方向が薄膜試料面に対してc軸配向をしていることが示された。 (4)一般式A_2BX_4強誘電体の化学式をもつハライド強誘電体群(A=Cs,Rb,K,Tl, B=Zn,Co,Cd,Hg,X=Cl,Br,I)には、我々のグループにより見出された強誘電体(例えばRb_2CdI_4等)が数多くあるが、幾つかの物質をさらに合成して、物質の元素置換による転移点の動きを整理した。
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