研究概要 |
現在までに常圧で合成可能な2重ハニカム格子超伝導体,Li_xZrNCl, Li_xZrNBr, Na_xHfNClの大量合成を行い,それらの結晶構造を中性子回折を利用して決定してきた.その結果,ハリソンによる遷移積分t(バンド巾に比例)の減少に対応して,Tcが上昇することが明らかとなった.これはHfという重い原子を含むHfNclでも,格子が硬く,フォノンのデバイ温度θ_Dが下がらないことに助けられている.新超伝導体探索としては,現在までに,YOCl, TaOn, CeSI等の合成を行ってきた.これら物質群ではいずれもθ_Dが変わらないとする上記の関係からすれば,30K程度の高い超伝導転移温度が期待される.その結果,1ppm以下の水分量の循環ガス精製式のグローブボックスで,Li_xYOClの合成に成功し,絶縁体であることがわかった.これは2重ハニカム格子化合物で,初めてキャリアがドープされた絶縁体を発見したことになる.しかもその磁化の温度変化は非常に珍しいもので,スピンギャップ的であるが,室温以上から磁化に履歴がある.これは部分的に占有した局在スピンが,磁場中で配列を変えていると思われ,大変興味深い.またこのことから,反対に,Na_xHfNClが絶縁体に近い金属であることもわかった.今後,Li_xYOClが圧力下で,超伝導体となるのかどうか,またその磁化の振る舞いがどのように変化するのかという点に興味が持たれる.
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