研究概要 |
本研究は三元系2:1:3金属間化合物を中心物質として研究を進めた。三年間にわたって以下の成果を得られた。(1)5f電子系化合物U_2TSi_3(T=遷移金属):基礎物性の測定結果、T=Pd,Pt,Auの化合物は単純なスピングラス、T=Rh,Ni,Co,Irの化合物は強磁性短距離磁気秩序を伴うスピングラスであることが判明した。更に、U_2TSi_3(T=Co,Ni,Rh,Pd,Pt)はXY型、U_2IrSi_3はイジング型NMADスピングラスであることを確認した。(2)4f電子系化合物R_2TSi_3(R=希土類):Nd_2PdSi_3は弱いスピングラス振舞いを伴う強磁性物質、Tb_2PdSi_3とDy_2PdSi_3はリエントラントスピングラス物質、Nd_2AgIn_3、Pr_2AgIn_3、Nd_2CuIn_3、Pr_2CuIn_3はそれぞれT_f=12.6、4.0、14.1、5.4Kの反強磁性クラスタグラス物質であることを明らかにした。その他、1:2:2、1:1:1、1:4:8、3:2:4、3:4:4、2:1:6系などの数十種類以上の三元系金属間化合物を合成し、それらの基礎物性について研究を行った。そのなか、UAuSi、UAuAl、Ge-rich UCuGe、PrCoRuSi_2に対する物性測定結果、クラスタグラス或いは長距離磁気秩序を伴うスピングラス振舞いを観測した。f-d(f-p)混成及びRKKY型の相互作用はそれぞれ5f電子系及び4f電子系におけるNMADスピングラス状態の起因であると考えられる。また、非磁性原子のランダム配列により、長距離磁気秩序を破壊し、磁気クラスタが誘起される可能性が高い。これは多数のNMAD物質は単純なスピングラスではなく、クラスタグラスの特徴を現れた原因であると考えられる。
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