研究概要 |
希土類金属をドープしたDB_6(D=Ca,Sr,Ba)における強磁性発現が見出されて以来、この化合物群の特異な電子状態に関する注目が集まっている。DB_6と類似した特異な電子構造を持つDB_2C_2(D=Ca,Sr,Ba)において強磁性発現の有無を明らかにすることはその発現メカニズムを明らかにする上で非常に重要であり、それらの化合物を合成し、単結晶を育成し、物性測定を行うことは極めて急務である。 我々は昨年度、DB_2C_2における強磁性発現の有無を明らかにするために、高純度の原料からCaB_2C_2を合成した。また、自己フラックス法により10ミクロン程度の単結晶を得た。この試料についてSQUIDを用いて磁化測定を行い、強磁性転移温度が450Kおよび600Kであることを見い出した。これらの結果は、青山学院大秋光らによる同物質の転移温度770Kとは異なった。 本年度は、さらに高純度の原料を用い、モリブデン坩塙を用いた反応により、1mm角程度の不純物をまったく混入させない単結晶を得た。この単結晶を用いてX線構造解析を行い、正方晶で空間群I4/mcmであることを明らかにした。また、ホウ素、炭素の作る四員環における結合角は、角BCBのほうが角CBCより小さく、B-B間が短くなるように四員環が歪んでいることが明らかになった。さらにこの物質の光反射スペクトルを測定し、K-K変換により誘電率を求め、この物質が、狭いギャップを持つ半導体であることを明らかにした。 また、この単結晶は強磁性を示さず、本物質で見出された高温強磁性は、最終的には不純物による可能性が高いものと結論付けられた。
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