研究概要 |
強相関電子系物質のおもしろさは,エキゾチックな機構によって現れる多様な量子凝縮相にある.具体的には,モットの金属-絶縁体転移,遍歴電子磁性,エキゾチック超伝導,巨大磁気抵抗など,他では見られない量子現象が現れる.それらを理解するため,量子臨界点,低次元性,スピン揺らぎ,マージナルフェルミ液体論,軌道秩序などの新概念が提唱されている.中でもRu酸化物では,Sr_2RuO_4のp波超伝導に代表されるように,他に類を見ないほど多彩な量子現象が現れる.本研究では,高温超伝導と同様な反強磁性を基底状態に持つモット絶縁体Ca_2RuO_4の金属化とその基底状態の探索を目指した. 3年間にわたる本研究によって得られた成果は以下の通りである. (1)モット絶縁体Ca_2RuO_4は0.5GPa加圧することで構造転移を伴って絶縁体-金属転移し2次元金属となる. (2)この圧力誘起金属相の基底状態は遍歴電子強磁性である.これは飽和磁化値が0.4μ_B/Ru-ionとRuが局在したときの値2μ_B/Ru-ionに比べ十分小さいことから判った. (3)強磁性転移温度は約5GPaで最大のT_c〜25Kとなったあと減少10GPa以上の加圧で消失,量子臨界点及び超伝導が期待される. (4)我々の得た圧力相図はRuO_68面体の動きでほぼ説明が出来る. この物質の金属相本来の性質を明らかにするためには,絶縁体相を完全に抑制する必要がある.これには約2GPa以上の圧力が必要であるが,従来のピストンシリンダーセルでは2GPaが上限であった.これを我々はMP35N合金を用いたセルを開発4GPaの圧力を発生可能にした.
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