研究概要 |
準結晶の基本構造である準周期格子は,高次元の周期構造の3次元実空間への射影として記述されるため,準結晶の原子の空間配置には通常の格子振動の自由度(フォノン自由度)のほかに,射影する際の直交補空間の位置の揺らぎに関係するフェイゾンの自由度がある.フェイゾン揺らぎによって配置のエントロピーは非常に増大するので,自由エネルギーの減少が可能となる.フェイゾン揺らぎは実空間では原子の平衡位置の生成消滅を引き起こし,現実の系ではこれは拡散によって実現されると考えられる.多くの準結晶合金がその相図上で,原子拡散が容易になる高温で広い安定領域を持っていることからこのモデルが有力視されている.本研究では,高温X線回折測定でランダムフェイゾンモデルを直接的に検証することを目的とする Al-Pd-Ru系の準結晶の単結晶を用いて、高輝度光科学研究センター(Spring-8)のビームラインを用いて、800℃までの高温散乱実験を行った.その結果、(1)500℃から600℃にかけて回折強度の減少の割合が非常に大きくなったこと、(2)温度ヒステリシスを描くこと等が明らかになった.この実験はさらに続ける予定である.さらに本年度は,実験室系の通常の4軸回折計での実験可能な、高温ステージを設計製作した。このステージは回折計の角度の自由度は小くなるが,簡単なアダプターによって特に高温用に設計されていない回折計に取り付けられる.当研究室での実験のほか、放射光施設のさまざまな実験設備に適用できる.現在実験室系で,Al-Cu-Fe系正二十面体相の高温散乱を測定中である.
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