研究概要 |
ガウジが地下深部でどれ位の強度を保持できるかという問題は断層の滑り破壊過程を考える上で大変重要であるため,ガウジを試料とした三軸圧縮試験結果を考察した.数100気圧の拘束圧下では,正規圧密下であってもせん断に伴ってダイラタンシーが現れ,強度が増大することが明らかとなった.これはガウジの広範囲にわたる粒度分布特性によるものと解釈できる. したがって,ガウジが単に摩擦面に対して潤滑油的に振る舞うのではなく,効果的なカップリング剤として機能する可能性が出てきた.ガウジの力学挙動をより把握するためには弾性的な性質を計測する必要があり,乾燥したガウジ試料の地震波速度の測定結果は,数気圧の拘束圧下ではP波速度が約1.5km/sec, S波速度が約600m/secと小さいが,数kbになると,それぞれ4.3km/sec,2.4km/secと急激に増大することから,震源域ではS波速度が通常の地震のrupture velocity程度になる可能性が高いことが明らかとなった. ガウジのような粘土の試料にせん断変形を加えると,試料は電気的に分極することが明らかになった.このような報告はまだあまり見あたらず,新しい現象と思われるが,これまでに流動電位という概念があり,これに類した現象である可能性は否定できない.しかしながら,変形によって現れる電位の大きさはかなり大きなもので,増幅器なしでも十分に観測できる大きさである.粘土のせん断に伴う電気分極は一次圧密および二次圧密過程で起こっている吸着水層付近の正負のイオンの動きと大いに関連しているとみられる. このように,粘土の変形に伴って電位変化が発生するとすれば,野外においてもひずみが大きいところでは,これに応じた自然電位を観測できる可能性があることが明らかとなった.
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