研究概要 |
美濃帯(ジュラ紀付加体)には付加した海洋性岩石として,遠洋深海成のペルム紀〜前期ジュラ紀放散虫層状チャートと遠洋浅海成のペルム紀石灰岩の存在が知られている.浅海成の三畳紀〜ジュラ紀石灰岩が存在しないのはペルム紀石灰岩を堆積させた海山・海台等の高まりが沈降し深海性堆積場となったためとも考えられるが,ペルム紀浅海成石灰岩を整合に覆う三畳紀深海成チャートの存在は知られていない.一方で,郡上八幡・赤坂金生山などのペルム紀石灰岩中には,三畳紀のコノドントの混在群集を含む洞窟・裂か充填石灰岩があり,また,三畳紀チャート中には浅海域からもたらされた砕屑岩が挟まれており,三畳紀に浅海成石灰岩が存在したことを示唆する.三畳紀チャート中に挟まれる砕屑性石灰岩は,三畳系浅海成石灰岩の存在を直接示すが,高山,郡上八幡,上麻生,美山,根尾,伊吹等に分布するチャート中の石灰岩を調査した結果,それらは,(1)ペルム紀のチャートに挟まれる砕屑性石灰岩,(2)年代決定に有効な化石を含まず時代未詳のチャート中に挟まれる砕屑性石灰岩,(3)後期三畳紀のチャート中に挟まれる遠洋深海成石灰岩のいずれかであることが判明した.また,中期〜後期三畳紀の層状チャート中には白色チャートが挟まれる.これはもともと砕屑性石灰岩で,後の珪化作用のためにチャートになったのではないかとの仮説のもとに解析を行った.しかし,顕微鏡観察・年代決定などからは結論は得られなかった.最終年度には,美濃帯の北方延長と考えられている極東ロシア,サマルカ帯についても同様な調査を予察的に行った.秩父帯の田穂,上村の三畳紀石灰岩中には,無堆積・化学溶解を示す層準がみつかり,同様な現象が美濃帯の石灰岩体でも大規模に起こった可能性がある.
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