研究概要 |
岩石破壊時の新生面形成・摩擦発熱などの外的刺激に起因する荷電粒子放射の機構(フラクトエミッション,トライボエミッション)が,破壊誘起電磁気現象に及ぼす影響を評価することを目的として,(1)油圧式三軸変形試験機システムの設計・製作,(2)圧力容器内部での電磁界変動検出用アンテナの試作,および(3)岩石破壊に伴う電荷変動信号の解析をおこなった. 【実験結果】一軸破壊実験,封圧下での三軸破壊実験どちらの場合においても,花崗岩試料にのみ主破壊前の変形加速ステージにおける顕著な電荷変動が認められた.また,微弱ながら幾つかの実験では,電荷変動と同期して電界の変動も認められた.電荷の発生にはAEの発生との明瞭な関連性が認められる.一方,石英を含まない試料(玄武岩,ハンレイ岩,カンラン岩,蛇紋岩)においては,主破壊に先行するAEの発生が認められるものの,電荷および電界に顕著な変動は認められたかった.これらのことから,主破壊前に計測される信号発生においては石英の圧電効果が主たる要因となっているものと考えられる.一方主破壊時には石灰岩を除く全ての試料において,顕著な電荷および電界の変動が認められた. 花崗岩,ハンレイ岩で,破壊に伴って記録される電場変動信号のレベルに大きな差は認められない.また,MgOの破壊においては,信号の急激な変化を断続的に含む特徴的変動が認められた.この特徴はMgO結晶の強い劈開性に起因する可能性がある. 【まとめ】今回の実験では,強圧電性結晶である石英を含まない岩石あるいは非圧電性結晶であるMgOの破壊に伴い,試料表面の電荷および電界の明瞭な変動が認められた.このことは,破壊により,試料近傍に圧電分極以外の原因で過渡的な電場が形成されたことを意味している.岩石破壊に伴う電磁気信号計測においては,破壊そのものに起因する電磁気現象が存在することを意識して今後の研究をすすめる必要がある.
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