研究概要 |
本研究においては,先ずpptないしそれ以下の極微量のレニウム・オスミウムの分析方法の検討と改良を行った.試薬の精製は主として蒸留により行ったが,繰り返し行うことによりブランクはレニウムで15ピコグラム,オスミウムで0.05ピコグラムまで低減できた.しかし,レニウムフィラメントからのレニウムの寄与が高く最後まで問題として残ったが,質量分析法を工夫することである程度改善できた.実際の試料については,黒鉱鉱床などの硫化鉱物については良好な結果が得られた.堆積岩については,二畳紀の石灰岩(岐阜県赤坂),ジュラ紀の泥質堆積岩類(兵庫県篠山市),第三紀の泥質堆積岩類(島根県)および現世の河川(淀川など)および大阪湾の堆積物について検討を行った.石灰岩は1870s/1880s比が2.85〜13.44と高い値が得られたが点がばらつきアイソクロンは得られなかった.この原因は熱を被ったためにレニウムが散逸したためと考えられる.また,ジュラ紀の泥質についても良好なアイソクロンは得られなかった.しかし,一部は妥当な値であろうと考えられるので,さらに検討すると年代が求まる可能性がある.第三紀の泥質山は確定的ではないが妥当なアイソクロンが得られた.また初生同位体比は約0.765で当時の海水の値として妥当である.現世の河川堆積物は,0.15程度の低いオスミウム同位体比で人為起源の金属類の汚染の影響と考えられる.大阪湾の堆積物はオスミウム同位体比が0.65程度であり海水に近いが河川堆積物と同様に金属の汚染が認められる.本研究では,堆積岩のレニウム・オスミウム法による年代測定は,古い時代の熱を被っている試料には適用が困難であるが,比較的新しく(第三紀)変成を受けていない試料については適用でき,有用であることが明らかとなった.
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