研究概要 |
平成13年度:志摩半島秩父帯における黒瀬川帯と目され,著しい蛇紋岩帯で特徴づけられる五ヶ所-安楽島構造線(三重県鳥羽市安楽島〜同南勢町五ヶ所,以下G-A)が途絶えている南勢町五ヶ所を対象地域の1つとして地質調査および重力調査を行った。重力データの結果から,1,蛇紋岩を含めて黒瀬川帯はナップとして秩父帯の上に座乗しているのではなく,地下深部に根付く高角度断層をなしていること,2.少なくとも蛇紋岩メランジェあるいは大規模な破砕帯としての黒瀬川帯は,その西方には連続しないことが明らかとなった。黒瀬川帯の岩石は,その西方,秩父帯が途絶える奈良県まで続いていることが地表調査で確認されているので,この重力データは黒瀬川帯の存在を否定するものではなく,黒瀬川帯の破砕帯としての規模が小さくなっていること,および重力調査に不可欠な稠密な道路ネットワークに欠く山岳地帯では地域地質調査の1手段としての重力調査が無力であることを確認した。3.もう1つの対象地域である関東山地では,地質調査から確認した黒瀬川帯(名栗断層帯)が顕著な負の重力異常帯をなすことを確認し,地表地質調査に先立つ予備的な調査手段として重力調査が有効であることを実証した。 平成14年度:1.G-Aから北側に分岐する,秩父帯北帯と黒瀬川帯を隔てる断層沿いに従来知られていなかった蛇紋岩露頭を発見し,その延長を鋭意追跡したもののこれを発見するに至っていない。このことから高角度黒瀬川帯にへい入している蛇紋岩が北帯南限の底角度断層によって覆い隠されているものと断定し,その断層の性状を重力調査によって推定した。2.関東山地においては前年度地質調査で確認した黒瀬川帯(名栗断層帯)の北方延長で重力調査を続行し,その延長と考えられる負の重力異常帯を確認しているが,現段階でこの線上に黒瀬川帯を特徴づける岩石を発見するには至っていない。
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