研究概要 |
平成13,14,15年度に,北海道苫前町古丹別地域において地質調査を約二週間共同で行った.また,平成13年度には北海道穂別町,夕張市,および羽幌町の調査も行った.主要研究地域である古丹別地域では約2Kmに渡って大型化石,泥岩試料,および放射年代測定用の凝灰岩試料を採取し,同時に1/1000の縮尺の詳細なルートマップを作成した. 古丹別地域では大型化石の産出は不良ではあったが,日本ではMiddle Turonianの示標種として用いられているInoceramus hobetsensisの層序的産出範囲を詳細に絞り込むことに成功したことが最大の収穫といえる.その範囲を含んで,ほぼ調査地域全体から連続的に泥岩を採取することができた.それらの泥岩は同位体分析用として,あるいは浮遊性有孔虫抽出用として系統的に金沢大学に保管されている(一部は粉末未処理状態,一部は酸処理済). 分析装置の借用を依頼していた某国立大学の研究室の分析装置の調子が不良であったため,古丹別試料の分析予定は延期した.穂別地域の泥岩試料の炭素同位体比測定は平成15年度末にアメリカ・インディアナ大学に依頼して分析を行ったが,浮遊性有孔虫層序からの成果を裏付ける結果を得た. 穂別地域では浮遊性有孔虫層序について大きな進展が見られた.国際的な年代示標種(Helvetoglo botruncana helvetica)とその化石帯を認定し,この種に附随して産出する国際的に認識可能な種も確認できた.少なくとも4つのMiddle〜Late Turonianにかけての広域分布種の,日本に於ける層位分布関係が明らかになった.その成果は,現在論文として投稿の最終段階にある.穂別地域の予察的な炭素同位体比測定の結果は,重要な種が共存して産出する鍛冶屋の沢下流部がMiddle Turonianであること(つまりUpper Turonianではない)ことを示唆している. 本研究で最も力点を置いた古丹別地域の幌立沢における,初年度の成果が既に2つの公表論文として出版された(土屋ほか,2003;Hasegawa,2003).また,これまでの研究蓄積に新たに本研究で得た知見を加えた論文も複数出版された(次頁のリストを参照).
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