研究概要 |
本研究課題では,2000年カルデラ形成事件を対象とした資料収集と現地調査を行い,カルデラ形成事件の推移を明らかにし,今回の活動が三宅島の発達史の上でどのような意味を持つのか検証すること,過去の噴火から今回の活動までを通じ,玄武岩質マグマやマグマ供給系がどのように移り変わってきたかを明らかにすること,を目的とした.平成14年度までの研究で 1.2000年9月〜2003年1月にヘリコプターによる観察を38回おこなってカルデラの状況の変化,カルデラ壁の観察を行なった. 2.三宅島に渡島し,2000年の噴出物の観察を行なった. 3.噴火前に採集した最近1万年間の岩石試料,ボーリングコア試料の全岩および鉱物化学組成の化学分析を進め,マグマの時間変化の解析を進めた. カルデラの陥没はヘリコプター観察から,基本的には2000年秋以降進行は止まったが,不安定な急崖がわずかづつ崩落し,カルデラ底の埋積が進んでいること,カルデラの北側と南側では構成している地層が異なっており,山体中心部の構造すなわち北側が古く,南が新しいことが,明らかになった。 岩石の化学分析からはマグマの化学組成と山体の成長,カルデラの形成事件とが密接に関連しており,ア)10000〜7000年前,イ)4000〜2500年前,ウ)2500年前のカルデラ形成噴火,エ)2500〜1300年前,オ)1390〜850年前,力)550年前〜西暦1983年,それぞれ特徴をもったマグマが噴出し,それぞれに対応するマグマ供給システムが存在したたことが明らかになった.キ)酉暦2000年の噴火の噴出物はこれらとは異なり,新たなマグマ供給系に由来するらしい.山腹で掘削されたコア試料とこれらの噴火期とが対応していることもわかってきた.
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