研究概要 |
本研究の主目的は,星野が開発した地殼流体-岩石相互作用解析プログラムMIX99に高温・高圧型の流体の状態方程式(EOS)を組み込み,地殻流体の混合や沸騰に伴う様々な地質現象のシミュレーションを可能にする新たな解析コードの開発にあった.このため,先ず,これまでに提唱されている全てのNaCl-CO_2-H_2O系流体のEOSについて,エンタルピー解析を行った.その結果,何れのEOSもその適応領域全域にわたるエンタルピー解析に耐える精度を持っていないことが判明した.この解析結果を最新のEOSの発表者の一人(A.Anderko)に連絡し,解析法の証明と結果の確認を行い,EOSの欠陥の確認と新たなより高精度のEOSの必要性に対する認識を得た.そこで,MIX99へのEOSの組み込みを中断し,これらのEOSが解析可能な範囲に限定したNaCl-CO_2-H_2O系とCO_2-H_2O系流体のそれぞれの減圧沸騰をシミュレートし,その結果をMIX99に組み込むこととした.更に,地質学の分野で世界的にもっとも広く待ちいられている熱力学データ解析コードで,以前にライセンスを取得していたSUPCRT92のMIX99への組み込みを行った.これを用いて,鉱液の沸騰に伴う鉱化作用をシミュレートした結果,これまで鉱床学分野で予想されていた「鉱液の沸騰が鉱化作用の直接的な引きがねになる」という概念は誤りであることが明らかにされた.また,この解析の結果,特にNaCl-H_2O系流体の300℃〜400℃付近での誘電率の変化が様々な化学的地質現象の解明に極めて重要であることが示唆され,この解明が次の地球化学的研究の本質的に重要な課題であることが示された.
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