研究概要 |
1.微生物による重金属濃縮機構と海底堆積物 海水中の重金属が微生物活動によってどのような機構で析出するかを実験的に検討した。その結果,海水棲のマンガン酸化バクテリアの一種であるシースバクテリアは,マンガンのみならず,Co,Niをはじめとする多種の重金属を析出しうる能力を有することが明らかになった。他方,Cdのような生物毒性の強い重金属では析出はほとんど見られず,海水中で微生物活動によって重金属が選択的に析出しうることが明らかになった。バクテリアの作用によって析出するマンガン酸化物の結晶構造は,海底に堆積するマンガンノジュールに等しい。これらの研究結果は,重金属を含むマンガン酸化物であるノジュールやクラストの成因として,バクテリアの媒介の可能性を示唆している。さらに,深海および浅海におけるマンガンノジュールやコバルトクラストの採取と分析を行い,実際の海底におけるマンガン酸化物の析出過程を検証した。 2.海底下における水-岩石相互作用よる重金属濃縮 海水起源の熱水と鉱物の相互作用によって,海底に黄銅鉱,方鉛鉱,閃亜鉛鉱などの硫化金属鉱物が析出する過程を実験的に検証する目的で,海水と岩石を特殊な熱水反応装置を用いて反応させた、250〜300℃,水蒸気圧(〜8.5MP)の条件下で,岩石中の重金属(Pb,Zn,Cu,Fe)が急速に溶出し,海水中の硫酸塩を還元して硫化鉱物を晶出する過程が実験的に確かめられた。これらの結果から,黒鉱鉱床などの硫化鉱床が海底下で形成される過程が実験的に証明された。 3.研究結果の応用 本研究結果は,将来の海底資源と目される海底金属酸化物や硫化鉱床の探査に重要な資料となる。さら本研究で明らかにされた海水と岩石の相互作用は,核廃棄物や二酸化炭素の地下貯留処理法の開発に応用されうる。
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