研究概要 |
水熱合成法によりhydroxylbastnasite型結晶構造を持つ六方晶系の希土類塩基性炭酸塩の単結晶を合成した。希土類元素の中で、比較的イオン半径の大きいLa, Pr, Nd, Sm, Euで、六方晶系の塩基性炭酸塩の単結晶が得られた。それらの単結晶についてX線回折反射強度を測定し、結晶構造解析を進めた。これらの塩基性炭酸塩はすべてhydroxylbastnasiteに提唱されている空間群よりも対称性の低い結晶構造を持つことが明らかとなった。一方、tengerite型結晶構造を持つ希土類含水炭酸塩Y_2(CO_3)・2-3H_2Oについて、X線源を異常分散の影響が少ない銅のKα線を用い、さらに吸収の少ないグラスファイバーにより単結晶を担持して、回折強度データを測定し、結晶構造の精密化を進めた。その結果、従来ではできなかった異方性温度因子での精密化が成功し、Y_2(CO_3)・2-3H_2Oにおける原子の熱振動の振動方向を明らかにすることができ、さらに水分子の水素原子の位置も推定された。 希土類元素の塩基性炭酸塩には、六方晶系が1種、斜方晶系が2種、正方晶系1種、の合わせて4種の結晶構造があることが判った。これらの生成は、希土類元素のイオン半径により影響を受け、イオン半径の大きい順に六方晶系、斜方晶系、正方晶系の塩基性炭酸塩が生成する。希土類元素のイオン半径は、希土類元素と配位する酸素との結合距離に直接影響し、その結果、希土類元素のイオン半径の影響を受けない炭酸イオンの配置に影響を及ぼし、それが全体の結晶構造に多様性をもたらしている。 希土類塩基性炭酸塩では、斜方晶系の弘三石型化合物では、希土類元素とカルシウムの置換が起こるが、それ以外の構造では同形置換は認められなかった。希土類元素とカルシウムの置換には価数の違いを補償する機構が必要で、この補償機構を結晶構造が受け入れるか否かが置換の鍵となる。
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