研究課題/領域番号 |
13640510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若林 知成 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30273428)
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研究分担者 |
鷲田 伸明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70101045)
百瀬 孝昌 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10200354)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2001年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 炭素クラスター / 光解離 / 分光学的同定 / マトリックス分離分光 / 赤外吸収 / 紫外可視吸収 / フラーレン / ポリイン / マトリックス分離法 / 赤外スペクトル / 紫外可視スペクトル |
研究概要 |
本研究は、宇宙物理や材料化学で興味のある直鎖および環状炭素クラスターの光化学を明らかにし、その結果をもとに、未知の炭素クラスターの分光学的同定を行うことを目的として、低温マトリックス中における炭素クラスターの光照射および分光実験を行った。まず、真空紫外領域から赤外領域までの吸収スペクトルが測定可能な低温マトリックス分離分光システムを構築した。次にグラファイトの蒸発によって生成した種々の炭素クラスターを含むマトリックス試料を製作し、波長可変レーザーを用いて特定の電子吸収帯を選択的に光励起した。光照射の前後での吸収強度の変化を紫外可視および赤外で測定し、相関をとった。その結果、ネオンマトリックス中における235nmの紫外吸収帯が直鎖構造のC_6分子の吸収帯であることを明らかにした。さらに、通常の約10倍の厚みをもつマトリックス試料の作成を可能にした結果、直鎖C_6分子の既知の可視吸収帯の光励起に伴う分散蛍光スペクトルを測定することに成功した。その結果、同分子の電子基底状態における対称伸縮振動モードのすべての振動数を明らかにすることができた。加えて、C_2分子の波長選択的光励起の実験ではマトリックスの種類によって電子励起後の緩和過程が特異的に変化し、ネオンマトリックス中でのみD→B'遷移が観られることを明らかにした。 環状構造の炭素クラスターの実験は信頼できる既知の分光データがないため、直鎖構造の炭素クラスターに比べて困難を極めた。そこでは環状炭素クラスターを選択的に生成する手法の開発が必須であると痛感した。そこでクラスター生成の基礎に立ち返り、真空紫外レーザーを用いた1光子イオン化質量分析法により、ヘリウム気流中におけるグラファイトのレーザー蒸発過程を詳細に調べた。その結果、従来の時間領域より遅い時間領域において、C_<10>という中性クラスターが特異的に生成することを発見した。さらに水素ガスを用いた同様の実験により、C_<10>クラスターが、直鎖構造の末端に水素が付加したポリイン分子C_<2n>H_2(n=2-5)と同程度に安定であることを明らかにし、低温ガスとして単離できる可能性を示した。このことはC_<10>の環状構造の分光学的証明に向けて大きく前進するものであると同時に、フラーレンC_<60>に匹敵する新たな炭素同素体研究の端緒を切り開くものである。
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